METARって一体なに?解読方法は?

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METARとは

いきなり本題にいきましょうか。おそらく「METAR」という言葉でこのブログにたどり着いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。覚えてしまえば簡単に解読できますので、一緒に見ていきましょう。ちなみに「メター」と読みます。

 定時飛行場実況気象通報式 のことで気象通報式の一種であり、航空気象情報を英数字を使って通報するための書式。
通常は空港または航空気象台から定期的に発せられ、航空関係者が空港または飛行場の気象状況を把握するために使用している。(Wikipediaより)

METARが定時なのに対してSPECI(特別飛行場実況気象通報式)というものも存在します。

METAR…30分ないしは1時間ごとに通報、AUTOの時間もあります。
SPECI…天候の急激な変化があった場合、航空会社から照会があった場合や航空機事故が発生した場合です。

SPECIもMETARと書式は同じですので、簡単に解読することが可能です。

METARの記載内容

では、このMETARには実際どのようなことが書かれているのか簡単に紹介します。

・日にち、時間
・風向、風速
・視程、滑走路視距離
・気象状況
・雲量、雲高
・気温、露点、気圧
・その他気象状況、雲の種類、降水量、乱気流の有無、観測状況など
・短期予報が加えられることもあります。

もう本当に様々なことが分かります!
それではここから実際のMETARのフォーマットを見てみましょう。

METARの解読

RJBB 141530Z AUTO 18004KT 9999 -RA FEW044 SCT050 BKN060 27/24 Q1005 NOSIG

空港名

RJBB…こちらは関西国際空港のICAOコードですね。

普段あまり4ケタで空港を表すのを目にすることはないかもしれません。
RJAA…成田、RJCC…新千歳、RJFF…福岡、RJGG…名古屋、RJOO…伊丹、RJTT…羽田、ROAH…沖縄那覇というように日本であればRJあるいはROから始まります。

その他海外であれば、ZSPD…上海浦東、RKSI…ソウル仁川、RCTP…台北桃園、WSSS…シンガポールチャンギ、KJFK…ニューヨークJFK、YSSY…シドニーなどがあります。

ICAOというのは国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization)のことで、カナダのモントリオールが本部です。ICAOコードの場合、4ケタで空港を表します。
その一方IATAコードというものもあり、IATAは国際航空運送協会(International Air Transport Association)のことで航空会社で構成される団体でスイスのジュネーブとカナダのモントリオールに本拠地があります。IATAコードの場合3ケタで空港を表し、関西国際空港であればKIXなど、なじみの深いコードですね。

日にち、時間

141530Z…協定世界時(UTC)14日15時30分です。日本時間は+9時間ですので、日本時間に直すと15日00時30分です。

Zはゼブラまたはズールーと言い、協定世界時をZとします。
18世紀ごろBowditchさんが書いた航海術の本に、経度15度ごとに25のゾーンに分けてJを除き、東の方向へABCと振っていったそうです。日本は+9時間ですのでIで表されます。METARを見るとIで表示されている空港もあります。
世界には時差がありますので、みんな同じ時間を使用しないと危険です。飛行に大切な飛行計画などもZタイムで記載され、気象などでもZで記載されていることがよくあります。

自動配信

AUTO…自動配信のことです。

風向、風速

18004KT…180度(真南)の方向から4KT(秒速2m程度)。

始めの3ケタが風向、後ろ2ケタが風速(平均風速)です。KTはノットのことです。1KTは約0.514m/sですのでざっくり考えて2KTであれば秒速約1mの風ということになります。
なお風向については、真北を360度(=0度)と考え、真東を90度、真南を180度、真西を270度として表しています。

VRB02KTと書かれていれば、VRB(Variable)風向不定2KT。3KT未満でかつ風向が60度以上変化する場合。
18010G24KTであれば180度の方向から平均風速が10KT、最大瞬間風速(Gust)が24KT。
平均風速と10KT以上変化がある場合にGを付けて表現します。
風速が100KTを超える場合はP99KTと表現されます。

もう一つ、風向風速のあとに、200V310と付加されることもあり、これは、200度(南南西)から310度(西北西)の間で風向が変動していることを表します。

風が全くない(0.4KT以下の)場合は00000KTと記載します。

視程(卓越視程)

日本では卓越視程(全方向の平均的な視程)を使用しています。
4ケタで表され単位はメートルです。9999であれば、9999mということになり、10,000m以上(10km以上)ということになります。

この数字4ケタではない場合もありますので、そちらも見てみましょう。

SKC 晴天(SKY CLEAR)
NSC 運航上支障のある雲がない(NIL SIGNIFICANT CLOUD)
CAVOK

気象条件が必要条件を満足する(CLOUD AND VISIBILITY OK)。
視程10km以上。
5,000ft(約1,500m)または最大の最低扇形別高度※1のどちらか高い値未満に雲(積乱雲、塔状積雲)がない。
天気略号表に一致するものがない。

※1 最低扇形別高度とは、飛行場を中心に半径25海里(46km)以内に含まれる区域にあるすべての障害物の高さに1000ft(約300m)を加えて設定した緊急時(航空機が自己の位置を確認できなくなったとき)の安全飛行最低高度のこと。各空港によって異なります。

滑走路視距離/RVR 鉛直視程/VV

R22/1200VP1800U
R34L/P1800N などと通報されます。

滑走路視距離(RUNWAY VISUAL RANGE 略:RVR)とは、滑走路上にいる操縦士が見通すことができる距離のことをいいます。視距離だけで考えた場合、2,000m以上あれば離着陸に問題がないため、上限は2,000mに設定されています。

R…Runway
22…着陸に使用する滑走路の番号
1200VP1800U…1,200m~1,800mの間で変化し、上昇傾向ということが分かります。

R…Runway
34L…着陸に使用する滑走路の番号
P1800N…1,800mで変化なし

視距離の前の文字について
 P 測定範囲を超える視距離について上限値以上
 M 測定範囲を超える視距離について下限値以下
視距離の後の文字について
 U 回復(上昇)傾向
 N 変化なし
 D 悪化(下降)傾向

もう一つ大切な視程があります。
それは鉛直視程です。通報としてはVV002などと報告されます。
鉛直視程(VERTICAL VISIBILITY 略:VV)とは、飛行場が霧・雨・雪などの視程障害現象に見舞われて、空港上空の雲の高さを観測することができない場合に観測されます。
操縦士が滑走路まで降下してきて、どの高さで地表を視認できるかという指標です。
こちらの単位はft(フィート)を使用しており、VV002であれば、002×100をして、200ft(約60m)くらいの高さで地表を視認できるということを表しています。

気象現象

-RA…弱い雨ということです。
この気象現象についてはとても種類が多いので一覧にまとめました。

強度・状況
弱い
記号なし
強い
VC 飛行場から8km以内の気象状況
特性
 TS 雷電(Thunder Storm)
 SH しゅう雨(Shower)
 FZ 着氷性(Freezing)
 BC 散在(Patches)
 MI 地(Shallow)低いところ
 PR 部分的(Partial)
降水現象
 RA 雨(Rain)
 DZ 霧雨(Drizzle)
 SN 雪(Snow)
 SG 霧雪(Snow Grains)
 GR 雹(Hail)
 GS 氷霰/雪霰(Small Hail/Snow Pellets)
 PL 凍雨(Ice Pallets)
 IC 氷晶(Ice Crystals)
視程障害現象
 BR もや(Mist)視程1,000以上のもの
 FG 霧(Fog)視程1,000m未満のもの
 SA 砂(Sand)
 FU 煙(Smoke)
 DU 塵(ちり)(Dust)
 HZ 煙霧(Haze)
 VA 火山灰(Valcano Ash)
その他
 SQ スコール(Squall)
 DS 塵嵐(Dust Storm)
 FC 漏斗雲(Funnel Cloud)
 SS 砂嵐(Sand Storm)
 PO 塵旋風(Dust or Sand Whirls)

このような気象状況を組み合わせて使用されます。
詳しくは下のMETAR紹介欄をご覧ください。

雲量、雲底の高さ

FEW044 SCT050 BKN060

FEW044…少しの雲が4,400ft(約1,300m)
SCT050…散在している雲が5,000ft(約1,500m)
BKN060…隙間がある雲が6,000ft(約1,800m)にあることを表します。

雲量や雲底の高さは3層まで通報されます。ただし積乱雲や塔状積雲がある場合は4層まで表現されています。高さは地上からの高さという意味のAGL(Above ground level)を使用しています。空港によって標高が違うためです。

ここで表される雲量には空(全天)を8として考えます。
それを踏まえて以下のように表現されています。

通報電文 意味 雲量(全体を8としたときの割合)
 FEW 少しの 1~2
 SCT 散在した 3~4
 BKN 隙間がある 5~7以上で隙間がある
 OVC 全天を覆う 8 隙間はなし

積乱雲や塔状積雲がある場合は、以下のように記載されます。
例:雲量5の積乱雲が2,000ftにある場合→BKN020CB
どの雲をCBと表されるのか「備考欄/RMK」にまとめていますので、このまま読み進めてください。

雲底の低い順番に記載され、同じ高さに積乱雲などがある場合は、重要な雲を後ろに持ってきています。例:FEW010 SCT030 BKN030CB OVC050

5,000ft以下の場合は100ftごと、5,000ft以上は1,000ftごとで表されています。

いかに5,000ft以下が着陸に重要かよく分かりますね!

気温、露点、気圧

27/24 Q1005 

27…気温
24…露点
Q1005…1005hPa QはQNH(平均海面10ftの値)で表されます。

TREND

NOSIG…天候に変化がない。

このTRENDは発表時刻から2時間に起こりうる気象の変化を取り扱う短期予報が付け加えられることがあります。現在成田空港、羽田空港、中部空港、関西空港の4空港で対応しています。

NOSIG…天候に変化がない(No significant change)
BECMG…天候が変化する。だんだん、のち、~になる(Becoming)
TEMPO…天候が一時的に変化する。ときどき(Temporary)

などの情報が報じられます。

備考欄/RMK

この欄にはこれまでの大切な情報と同じくらい大切な情報が加えられます。

例として…
・QNHとして報じた気圧をinHg(水銀柱インチ)に換算したもの(A3002など)30.02inHg.
・雲の種類、高さなど
・操縦士報告(乱気流など)
・気象状況の変化、雲の位置など
・雷や霧などの存在場所、移動方向など
・降水量
・WS(ウインドシア) などの情報があります。

先述しましたが、ここで実際のMETARのRMK欄を3つ載せます。

■①RMK 1ST004 3CU010 2CB020 6CU025 A2966 FBL TS OHD MOV E RI++
■②RMK 1CU010 4SC030 7AC090 A2968 MOD TURB OBS AT 0203Z ARLON 5000FT BY B738
■③RMK A2964 RI003 CB OHD MOV UNKNOWN TCU 15KM SW MOV UNKNOWN AND 35KM W MOV E

さて…訳の分からない英数字が並びました…。

①②共通ですが、1ST004などは雲量、雲の種類、雲の高さです。
これまでと同じで1は雲量(全天を8としたときの雲量なので8分の1くらいの量)
ST…後述します。004は4×100で400ft(約120m)ですね。

ここでどの雲をどの記号で表すのか見てみましょう。

記号 日本名 英語名 発生高度(m) 特 徴
 AC 高積雲 altocumulus 2,000~7,000m 斑状や帯状の形・ひつじ雲など
 AS 高層雲 altostratus 2,000~13,000m 灰色のベール状あるいは層状の雲
 CB 積乱雲 cumulonimbus 地上付近~22,000m 雷雲、入道雲、強い乱気流
 CC 巻積雲 cirrocumulus 5,000~15,000m 魚の鱗や水面の波のような形状をした雲
 CI 巻雲 cirrus 5,000~16,000m 薄く、細い筋状の雲
 CS 巻層雲 cirrostratus 5,000~15,000m 白いベール状の雲で空一面を覆うことが多い
 CU 積雲 cumulus 地上付近~10,000m 綿のような雲
 NS 乱層雲 nimbostratus 地表~10,000m 降水を伴う、空全体を覆い暗い灰色をしている雲
 SC 層積雲 stratocumulus 地上付近~2,000m ロール状、斑状に形成され、白色または灰色でまれに降水がある
 ST 層雲 stratus 地上付近~2,000m 最も低いところに浮かび霧状の雲で白色または灰色
 TCU 塔状積雲 Towering Cumulus 地上付近~15,000m 大気の状態が不安定なときに発生し塔のようにモクモクとする

※日本語名、英語名、発生高度や特徴はwikipediaを参考としました。

ということで、1ST004は雲量が全天の8分の1で雲の種類は層雲、高さは400ft(約120m)だということが分かります。
その他も同じように当てはめて確認してみてください。

次はA2966ですね。
こちらも先述しましたが、気圧を水銀柱インチで表したものです。
ちなみにすごく大まかですが、A2992がQ1013です。

FBL TS OHD MOV E…弱い雷電が頭上にあり、東へ移動中。
FBL(Feeble)弱い(Light/LGT)があり、その他は…
MOD(Moderate)並の
HVY(Heavy)強い などと表現されます。

TSは雷電(雷)のことでしたね。

OHD(Overhead)

MOV(Move)

E(East)の略です。

RI++…降雨の瞬間強度が30mm/hを超える場合。
RI003などと降雨の瞬間強度を数値化している場合もあります。

MOD TURB OBS AT 0203Z ARLON 5000FT BY B738
…協定世界時02時03分(日本時間11時03分)にB738という機種がARLONというポイント(房総半島)で高度5,000FTで並の乱気流を観測した。

CB OHD MOV UNKNOWN TCU 15KM SW MOV UNKNOWN AND 35KM W MOV E
…頭上で積乱雲があり、移動方向不明。塔状積雲が空港の15KM南西にあり、移動方向不明、また同じ塔状積雲が空港35KM西にあり、東へ移動中。

など様々な情報が分かります。

これらの他に…

気圧が観測時前30分間に1hPa以上増減した場合も記載されます。
上昇…P/RR(Pressure rising rapidly)
下降…P/FR(Pressure falling rapidly)などですね。

他にも質問等があれば、お答えもしくは記事の更新をしますので、おっしゃってください。

METAR紹介(復習)

ここまで来ましたので、実際のMETARを見てみましょう。

ZSPD 150930Z 27003MPS 9999 BKN040 32/24 Q1004 NOSIG

これが基本的なものですね。
ZSPD…中国上海浦東国際空港
150930Z…協定世界時で15日9時30分(日本なら15日18時30分)現在のもの
27003MPS…270(真西)から3MPS(秒速3メートル meter per second)日本はKTを使用しています。日本の場合27006KTと表記されます。
9999…10km以上の視程
BKN040…4,000ft(1,200m)に隙間のある雲(雲量は8分の5~7)
NOSIG…今後2時間以内に天候の変化がない
と読むことができます。

次は少し複雑なものです。基本は同じですよ~。

RJTT 150413Z 09010KT 4500 R34L/1000VP1800U R22/P1800N R34R/0750VP1800D R23/0600V1300D +SHRA BR FEW007 BKN010 BKN020 26/25 Q1004 RMK 1ST007 5CU010 6CU020 A2967 9999N

せっかくなので、少し長いものを選んでみました。
RJTT…東京羽田国際空港
150413Z…協定世界時15日4時13分(日本時間15日13時13分)
09010KT…090(真東)から10KT(秒速5m)
4500…視程4,500m
R34L/1000VP1800U…滑走路番号34LのRVRが1,000m~1,800mで変化あり。回復傾向。
R22/P1800N…滑走路番号22のRVRが1,800mで変化なし。
R34R/0750VP1800D…滑走路番号34RのRVRが750m~1,800mで変化あり。悪化傾向。
R23/0600V1300D…滑走路番号23のRVRが600~1,300で変化あり。悪化傾向。
+SHRA…強いしゅう雨
BR…もや
FEW007…少しの雲が700ft(210m)の高さにあり
BKN010…隙間のある雲が1,000ft(300m)の高さにあり
BKN020…隙間のある雲が2,000ft(600m)の高さにあり
26/25…気温26℃、露点25℃
Q1004…QNHの気圧が1004hPa
RMK…備考として
1ST007…雲量1の層雲が700ftに
5CU010…雲量5の積雲が1,000ftに
6CU020…雲量6の積雲が2,000ftに
A2967…水銀柱インチの場合29.67inHg
9999N…空港北側は10km以上の視程あり(という意味だと思います。)

というように複雑なものでも少しずつ読むことができると思います。

最後に

以上ここまでMETARについて長々と書いていきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回は日本式のMETARを解読しました。アメリカやカナダはまた少し違います。
TAF(運航用飛行場予報気象通報式)についてはTAFはどうやって読むの?からご覧ください。
METARが読めるようになるとTAFも簡単です!

航空機は基本的に向かい風に向かって離着陸を行います。

どの方角から着陸するか分かれば面白いですよね(^^♪

それでは読んでいただきありがとうございました!

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